読む前の注意
このSSは時間的に志貴が遠野家に移動する前の話のIF「もし翡翠が志貴の学校にやってきたら」をちょーっと壊して書いたものです。というか「すごいよマサ…げふんげふん。
とにかく、キャスティングクロスオーバーっぽくてそれっぽくないSSをお楽しみください。
あと月姫ファンの方々へ
暴力反対(マテ
かれ〜 かれ〜 び〜ふ〜
放課後のチャイムが鳴る。
……6時間目の後になったからそうなのだ。たとえ信じられなくても。
とりあえず部活に行こうとしていたとき、翡翠がいつもよりあせっている様子が目に映った。
「どうしたんだ翡翠。いつもより急いでいて?」
どうせ部活だから逃げるわけないのに。いつもよりあせっていたのを不思議に思い尋ねてみる。
「……あっ! 部活ですか、今日は中止です」
「中止……何で?」
「……大事な用事があるからです……おそらく皆さんもだと思います」
周りを見てみると確かに全員いつもより急いでいる。
……今日なんかあったっけ?
「志貴様は急がなくてよろしいんですか?」
「えっ? 今日って何があるんだ?」
俺にも大事なのかその用事って。学校の行事は何もないし……。
「志貴様……ご存知ないのですね。今日は……」
「『マジカルさっちん』の放映日です!!」
「何ぃー!!?(ガビーン)」
ちょっちょっと待て、皆それで急いでいるのかー!?
「事の重大さに気づいたようですね」
「いっいや、そのことに驚いたんじゃなくて……」
「急いでください志貴様! もうすぐ始まりますから!」
そういわれて俺は腕を引っ張られながら教室を後にした。
……教室ってこんなに早く遠のくものなのかなと思いながら……
そしてついた場所は部室だった。
「ふう、部室にテレビをセットしておいて正解でした」
部室にはアルクェイドやシエル、有彦と部員全員が集まっていた。何故か弓塚の姿もそこにはあった。
「遅いぞ志貴」
「志貴くん、遅いよ」
「いや、遅いって何で弓塚がここに……」
そう言ったはいいが、俺たちが来た時間はちょうどのタイミングだったらしく、すぐにOPが流れてきたため皆静かになる。
そして、『マジカルさっちん』ははじまった――。
『魔法少女 マジカルさっちん』
魔法の源 恋の力〜
手に持つバトンは 鈍器の役割
赤く染まった〜 手袋を〜 はめている少女
彼女の名は〜 マジカルさっちん マジ狩るじゃないの
『そんなこと言う人はマジカルクローで八つ裂きだよ♪』
ああ〜マジカルさっちん 今日で死人は(以下略)〜♪
暗い暗い街の中を駆け巡る。
少女は走っていた。『魔』と呼ばれるものを倒す為。
『吸血鬼』と呼ばれるものを倒す為。
それは路地裏にいた。
少女に気づいた魔物は普通では考えられないほどの跳躍力でビルを飛び越える。
しかし、少女も魔物と同じように、いや、魔物の上をいく跳躍力を見せる。
その場面を見た人たちは皆そろってこう言った。
「鳥? 飛行機? いや、あれはマジカルさっちんだ!!」
「いってきまーす」
「いってらっしゃい、さつき」
お母さんにお見送りされて私は家を出た。
私――弓塚さつきはいつも家を早く出る。でも、学校に着くのは皆と同じくらい。
それには立派な理由があった。それは――
「今日も志貴くんはこの時間帯に来るんだよね」
そう、私は遠野志貴くんという同級生に恋をしていたのだ。それはもう病気と言っていいくらいに。
だって……
志貴くんってかっこいいんだよそれはもうとっても。だって私が閉じ込められたときもたまたま、いやここまでくるともはや運命の赤い糸でつながっているとしか思えないくらいのタイミングで私を助けてくれたの。その他大勢はおまけ。私を助けてくれたの。そのときの志貴くんの顔今でも目をつぶると思い出しちゃう。あああの普段の優しい顔の志貴くんも素敵だけどめったに見ないりりしい顔つきも素敵。志貴くんになら私貫かれちゃってもってああ私何いってんだろ。本当のことだけど。とにかく最高。別に志貴くんになら乱暴に犯されちゃっても警察なんかいかないむしろ望むところですってな感じでとにかくいいの。あとレソ……
……はっ!! 危ない危ない。そのままあっちの世界にトリップしちゃうところだった。
ちょうど私の精神が現世に戻ってきたのと同じくらいに志貴くんがやってきた。
「えへへ、志貴くんおはよう」
いかにも偶然ですってな感じで志貴くんの前に出る。この辺はもはや有名女優顔負けの技術を見に付けちゃった。こんな風になったのは志貴くんのせいなんだからね。
「あ、弓塚。おはよう」
いつも会っているのに相変わらず志貴くんは私のことを弓塚としか呼んでくれない。でもいいの。今はそれで幸せだから。でも、将来は『さつき』って恋人みたいに、いえ恋人としてそう呼んでもらうんだから!
「ここで会ったのもなんだし一緒に学校行こっ」
「そうだな」
志貴くんはいつも会っているというのに偶然の一言で片付けてくれる。
ここまで来ると鈍感も表彰モノだと思う。
ザワザワ ザワザワ
「おい、昨日のニュースみたか?」
「ああ、また吸血鬼が倒されたみたいだな」
「しかも倒したのってあのまじかるさっちんなんでしょ?」
「くぅうう! いいなあ、正体も分からず魔物を倒していく少女。かっこいいしかわいいぜー!!」
学校へ来ると、いつものようにざわざわとうるさかった。さらにマジカルさっちんが現れて以来、教室の中はこんな話で持ちきりだった。
もっとも、私はその正体を知っているのであまりその話にはかかわろうとはしない。へたにかかわってボロでも出たら大変だからだ。
「あ、さつきおはよう」
「あ、おはよう」
クラスの友達に挨拶をする。他の皆を私に気づいたのか次々に挨拶してくる。
志貴くんはというといつの間にか自分の席についていた。どうやら志貴くんは私と恋人同士とかいってからかわれるのが嫌らしい。
かわいそうな志貴くん。これが静かな教室だったら人目にもつかずいちゃいちゃしてくれるんだろうに……(注 さっちんの勝手な推測です!)
「さつきー、何ぼーっとしてんの?」
「あ、ごめん由美乃」
私の妄想中に話しかけてきた髪が長くて黒い、お人形さんみたいな同級生――由美乃が話しかけてきた。
「でも由美乃に言われちゃ私もおしまいかな」
「あーひどーい」
そうは言ったもののこの由美乃、おっとりした性格は骨の髄まで伝わっているらしく、1年の頃の遠足では一人取り残されるという事件まで起こした。なぜ事件とまで呼ばれるのかというと、さんざ探したあげく彼女がいた場所が近くの茶屋でゆっくりとしていたからだ。それ以来、彼女は何事にもほとんど動じない事から「まったり」というあだ名までつけられた。当然、本人もそのあだ名を気に入っているらしい。フルネームで呼んでいるのは私ぐらいなもの。
「何〜また遠野くんのことでも考えてたの〜?」
「うん、まあね」
私が遠野くんが好きだということを知っているのは彼女と、あとはうちの親ぐらいしかいない。特にうちのお母さんときたら私の知らない内にその事を察し、応援するようになったのだ。当然、私が学校に早く向かう理由も知っている。知っている上で早起きして私を起こしてくれているのだ。私はお母さんに一生頭が上がらないかもしれない。
「ねえねえ、そういえば聞いた〜? マジカルさっちんの話ー」
友達から出てきたその単語にびくっと体を震わす。まさか友達から出てくるなんて……。
とりあえず、当たり前のことをいい、ボロを出すのを防ぐ。
「うん、聞いたよ。また吸血鬼をやっつけたんだよね」
「そうそう、かっこいいよねー」
うっとりとした目で遠くをみつめる由美乃。私もさっきこんな感じだったんだろうかと思うとゾッとする。
「おお、かっこいいよな!」
私たちの会話に突如乱入してくる男子。そんなことできるのは一人しかいない。
「有彦くんもそう思うー?」
「ああ、もう漢としての浪漫回路に直撃ってなところだな」
漢としての浪漫回路……それはやっぱり……あれ? うわ、なんかそういうのちょっとやだな……。あっ、でもということは遠野くんもそういう可能性がなきにしもあらずということで、ということは結果的に……キャッ
「さつきー顔赤くなってるよー」
「えっそっそう? ごめんね」
訳も分からずあやまる私。混乱しているのが表に出ている。うー……恥ずかしい。
「何の話をしているんだ有彦?」
「おっ遠野か」
えっ!? とっ遠野くん!?
私は必死で顔が赤いのを元に戻そうとするが、あせればあせるほど逆に顔が赤くなってしまう。仕方がないのでちょっとうつむき加減に話すことにした。
「ちょっちょっとマジカルさっちんの話を……」
「ああ、俺も見たよ。すごいよな。一人で吸血鬼と戦って勝つんだから」
遠野くんに褒められている――
それが喜びとなるが、人に知られてはいけないのでうつむき加減のままこっそりと机の下で手だけガッツポーズをする。
「でも、さっちんのニュースがあるときって何故か秋葉の機嫌が悪いんだよな」
「秋葉って妹の……?」
遠野くんの家には遠野くん以外にあと3人住んでいる。メイドさんの翡翠さんとお手伝いさん(と言った方が服装的には近い)の琥珀さん、そして妹の秋葉さんだ。
正直なところ、この3人は私のライバルだと思う。一つ屋根の下、男は遠野くんのみ。きっと良からぬことを考えているに違いない。
遠野くんは私のことを考えているから自分からその3人を襲うようなことはないけど、もしかしたらその3人が逆に遠野くんを襲うかもしれない。そう考えると一日一日がひやひやもの。(注 何度もいいますがさっちんの勝手な推測です!)
「ああ、そうだ弓塚。ちょっとお願いがあるんだけど」
「なっ何?」
そっそんな……! デートの誘いだなんて! こんな二人も見ている前で……でも私たちの仲を知らしめるにはそれが一番有効よね! だったらむしろ遠野くんの家でやろうよ! そしたらその3人もきっとあきらめがつくだろうから!
「勉強教えてくれないかな? その、英語がちょっと分かんなくてさ……」
あれ? デートの誘いじゃなかったんだ……。
「今日の放課後にさ。頼むよ」
「うん、いいよ」
意気消沈している様子を見せないように無理して笑顔を作る。
まっ、いいか。志貴くんと二人きりになる時間が出来たわけだし。あっ、もちろん邪魔するやつは後で半殺しね♪
……はっ、ちょっとまってさつき。もしかして勉強教えてくれないかというのは……
『遠野くん、ここはこうやって……』
『ん〜よく分からないな……もうちょっとよく見せて』
『それはちょっと……恥ずかしいから……』
『男と女の性のつくりについて調べるんだろ? 俺もやってんだから……』
『最初は英語っていったのに……』
『でも、期待していただろ?』
『……うん』
なんだ、そういうことだったんだ! 志貴くんってば恥ずかしがりやなんだから。
うん、任せておいて。意地でも教室には誰も残さないようにするから!
そんな感じで続くw