「それじゃあねさつきー」
「うん、ばいばい」
教室に残っていた同級生が次々と帰っていく。遠野くんと私以外。
「さっ、じゃあ今から勉強教えてあげるね」
「ああ、でも今日はやけに貧血が多かったよな……」
「ふっ不思議だよね、いつもは遠野くんぐらいなのに」
「ははは、確かに」
そういった会話を交わしながら私たちは机を間に置いて向かい合う。なんかこれってお見合いみたい♪(注 何度もあるけど、あくまでさっちんの妄想の世界ではです!)
「それで、どこが知りたいの?」
「えっとな……ここがよく分からないんだけど」
「ああ、そこはね……」
こういうケースもありえるだろうからと勉強は真面目にしておいたのが今、報われる。
「ああ、なるほど! それでか?」
「ねっ? それでこれは……が……だから……」
「なるほどなるほど」
今遠野くんは真剣に私の言葉にだけ耳を傾けている。そう、私の言葉だけにだ!!
神様お願いです。もっと、もっとこの時間を長くしてください。いえ、むしろ止めても構いません!
……でも、やっぱり神様はそんなに甘くなかったの。
「……!」
「? どうしたんだ弓塚?」
「ごっごめん遠野くん、そういえば用事があるのすっかり忘れてた」
「用事……?」
「うん! ごめんね遠野くん、最後まで教えらんなくて」
「いいよ、また今度教えてくれればさ」
私はもう一度「本当にごめんね」といって教室を出た。
ふぇえ〜ん、こんなときに限って! こんなときに限って!
なんで昼間っから魔物センサーが反応するのよー!!
実は私は魔法少女である。今巷を騒がせているマジカルさっちんとは私の事なのだ。
人気の全くない校舎裏に回り込む。そこにはただ、一匹の黒猫がいるだけ。
「レンちゃん! よりにもよってこんなときに!!」
この黒猫、名前をレンという。私が魔法少女となって戦う羽目になったきっかけの一つを作ったのがこの猫である。私は腕につけている時計型のセンサーをレンちゃんに見せ付ける。
「……」
レンちゃんは首を横に振って意思表示をする。
「魔物が出たのは私のせいじゃないって? 分かっているけど何かに八つ当たりしたい気分なの!」
レンちゃんは怒っている私を無視して、移動する。魔物センサーが魔物が近くに現れたのを教えてくれるなら、レンちゃんはその魔物がどこにいるかを教えてくれる。猫の嗅覚ってそんなにあるのかなと最初は思ったけどね。多分魔物からでるなんらかのオーラを感知しているのかな?
「あっ、待ってよ!」
私は先に行くレンちゃんに走ってついて行った。
到着した場所は公園だった。この公園、どういうわけかは分からないけどよく魔物が集まるので私には馴染み深い場所だ。
「……」
レンちゃんの目線を追ってみる。そこには、いかにも悪ですってな魔物の姿があった。しかも人を襲っている。
「……って冷静に判断している場合じゃないよ!」
私は鞄の中にこっそり隠しておいたバトンを取り出すと、天高く掲げて
「マジカル ビューティフル チェーンジ!」
と唱えた。正直、未だにコレを唱えるのは恥ずかしい。
そして着替え完了。アニメのように魅せるシーンなんて少しもない。蒸着と同レベルの早さ。って何で私そんなマニアックなこと知ってるんだろう……(汗
ちなみに今の私はどんな姿かというと、胸に大きなリボンがついている妙にフリフリした黄色の衣装(下はミニスカート)に、純白のグローブ。靴には何故か羽、頭にはティアラがついている。
そして手には小さな女の子が憧れそうなステッキを持っている。
「さあ、行こうレンちゃん!」
私たちは怪人の場所まで奪取……じゃないダッシュした。
「フフフ……完璧だ。魔物は夜出るものという常識を打ち破り、夕方まえに現れる……。これぞマジカルさっちんからの攻撃を逃れるための作戦『時間差作戦』だ!」
その魔物は高笑いをしながらたまたま公園にいた子供を襲っていた。だけど……あの魔物、頭悪い。
「さて、ではいただきまーす」
そういって魔物が子供にかぶりつこうとするための隙を狙って私は――
「マジカルキーック!」
と、ライ○ーキックばりの強烈な蹴りを魔物にかました。
さらに靴はスパイクというオマケつき。
「ぐぶふぇっ!」
魔物がぶっ飛んで後ろにあったジャングルジムにぶつかる。子供は魔物の手から離れると私のほうへ逃げてきた。私はお家に逃げるように優しく諭して子供に被害が及ばないようにする。
その間に魔物が立ち上がり、私のほうをにらみつけた。
「おっお前は……!」
「世界の平和は無理だけど、せめてご近所の平和は守りたい!
隣人愛の象徴にして、でもやっぱり守るのは愛する人の為(はぁと)
恋する魔法少女、マジカルさっちんただいま参上!
世の中の悪い芽は私が狩り取っちゃうぞ♪」
実際の魔法少女はそういって決めポーズを取るのだが私は違う。
「ぐふっがはっ!」
そう、決め台詞を言いながら相手にマジカルバトンで打撃攻撃を繰り返すのだ!
実際、へたに隙を作るわけにもいかないし、第一、こいつは私と遠野くんとの甘いあま〜いラブラブタイムを妨害した張本人なのだ。
その罪! 死に値する!!
「マジカル・ホームラン!」
バトンを両手で持って一本足打法をにし、相手に向かって一気にバトンを振る!
「ぐげっ!」
もう一度魔物はジャングルジムにぶつかった。おかげでジャングルジムはあちこちがゆがみ、よりジャングルらしくなる。
「今日はマジカル・エナジードレインのおかげで調子は絶好調だからね! すぐ終わらせちゃうから!」
ちなみにマジカル・エナジードレインとは、相手の血をもらうことによって自分のエネルギーに変えてしまうという脅威の技である。ちなみにそれによって相手に起こる症状は貧血ぐらいであり、決して死徒になったりはしない。ありがとう! 今日貧血になった同級生たち♪
「いっくよートドメのぉ……」
バトンにエネルギーを集め、相手に向ける。
3、
2、
1、
エネルギー充填完了!
「マジカル・マーダーキャノン!!」
バトンの先から強大なエネルギーが放出される。目の前の魔物はそのエネルギーの前になすすべもなく、
「おっ俺はまだ何もしていないしどんな魔物かも分かってないのにィィィ―――!!!」
という捨て台詞を残してこの世から消え去った。うん、ばっちし♪
「……」
レンちゃんが私に話しかけてくる。
「えっ? 何? 戦闘能力の差がありすぎて面白くないって? 何をいってるの! 遠野くんとのあまいあま〜いラブラブタイムを妨害したんだから、敵には何の活躍の場もなくったって当然よ!」
「……(汗」
〜ナレーション〜
このときレンは、さつきを改めて怖い人物だと感じたという――。
―そして次の日――
「あっ遠野くんおはよっ!」
「ああ、おはよう弓塚」
いつものようにいつもの場所で挨拶をする。
「ごめんね、昨日は突然用事できちゃって……」
「構わないさ、今日教えてくれればそれでね」
「えっ……?」
遠野くんから出た一言に私は一瞬唖然とする。遠野くん、さっき――。
「結局あれから家で考えたんだけど結局分からなくてさ、教えてくれないか?」
「……うん!」
私は、笑顔で答えた――。
―???―
「マジカルさっちんねぇ……こんなののどこがいいのかしら」
女は、マジカルさっちんの写っている写真を軽く一瞥し、破り捨ててあたりにばらまく。
「あははー、やきもちですか?」
そこにもう一人女が現れる。
「なっ! そっそんなことは!」
「やきもちを焼くのは構いませんが、部屋を散らかすのはご勘弁願えませんか?」
そしてさらにもう一人――。
「あっ貴方まで!」
「まあまあ落ち着いてください。私たちは隙を見てあのさっちんを倒せばいいのです。正直、ここに現れる魔物なんて皆雑魚ですから。さっちんさえ倒せばこの話の主役は……」
「ふふふ、そうね。たとえこんな話でも兄さんといちゃいちゃ出来るのですからね――」
さっちんの戦いは、まだ終わらない。
次回予告
「あのさ、買い物に付き合ってくれないかな」
「えっ、私と?」
試験が終われば遠野くんとデート!?
「『弓塚じゃないとダメなんだ』だなんて――期待してもいいんだよね!」
浮かれるさっちん。だがしかし、そんなさっちんに赤い魔の手が伸びる。
「ふふふ……邪魔してやる。邪魔してやるわ」
「うわぁーとっても悪役っぽいですよ♪」
「キャラとしては敵役……いえ、適役ではないでしょうか」
ピンチになるマジカルさっちん、そのとき体に変化が――!
「なっ何……体が……熱い!」
「まっまさか! あの姿に変わるというの!?」
次回っ!『ライバルはナイチチ? 逆転のバーサーカーモード!!』
見てくれないと、撲殺しちゃうぞっ♪
番組が終わる。俺ははっきりいって唖然としていた。
「あー面白かったー」(アルクェイド)
「やっぱ浪漫回路とかなんて男の気持ちまで分かってるよなー」(有彦)
「私は何か主人公にすごく共感しちゃうな」(弓塚)
「次回が楽しみですねー」(シエル先輩)
「マジカルバトン……欲しいです」(翡翠)
皆それぞれの感想を言いながら部室を後にする。
いっいかん……。
ちょっとだけ、面白いと思ってしまった――!
〜ナレーション〜
もう俺は戻れない場所まできているのか!? と、自分自身について苦悩する志貴であった。
続く
あとがき
第10話でさり気にさつきが「志貴くん」といっているところはなんらかの布石です、多分。決してミスではないといっておきます(マテ
あと、次回予告のネタを提供してくれたジニアさんに感謝。次回がそんな話に本当になるかは不明ですw