「探し物をしているんだよ」
「そっそうか……ガンバレ」
そういって2股、いやそれ以上に股をかけてそうな男は去っていった。
ご主人様は「うぐう、手伝ってくれたっていいのに……」とか言っている。
大丈夫だって、俺たちの鼻があれば探し物だってすぐに見つかるさ!
だって俺たちは……そう、俺たちは『豚』なんだからな!
コータローさんの漫画補完SS 兼 世界初『豚』視点kanonSS(笑)
「豚さんの行方」
書いた人 ANPAN
俺とご主人様が出会ったのはごく最近のことだ。俺はとある農場で家畜として生まれた。でも、そんな風な生き方が嫌で農家の人の目を盗み仲間の2匹と共に逃げ出してきたのだ。
農家の人の追跡に怯えながら逃げる毎日、近くに大きな森とかなかったらきっとすぐに捕まっていただろう。森の中で、普段は食べないような雑草を食べながら必死で耐えた。
そして、ついに農家の人は俺たちのことをあきらめてくれたのである。しかし、そのときにはお腹の方が限界に近づいていた。
3匹で「腹減ったぁ〜」とか言いながら歩いていく。といっても人様には「ぶぅ〜ぶぅ〜」としか聞こえないのだが。
そして、とある公園を通りかかったとき、それがご主人様との最初の出会いだった。
「うぐぅうぐぅ、おいしいよ〜」
何かをおいしそうにほおばる女の子。「うぐぅ」とは鳴き声の一つだろうか?なんとなく親近感を感じてしまった俺たちはその子に近づいてみる。
「うぐ?あ、豚さんだ」
興味津々といった感じで俺たちを見る。でも、俺たちの目はその子の食べている物に目がいっていた。
「……これ欲しいの?」
俺たちの視線に気づいたのか、女の子が食べていたものを上げる。
「「「ぶぅ〜ぶぅ〜(その通りです!)」」」
「わっ!」
俺たちの声に驚いたのか女の子はその食べ物の入った袋を落とす。チャンス!俺たちはその隙を見逃さず、落ちた食べ物をほおばり始めた。
「あ〜僕のタイヤキが〜!!」
女の子は「む〜」と言いながら少し涙を出しつつ、
「僕のタイヤキ食べた分は働いてもらうからね!」
そんなこんなで、一応飯をもらった俺たちはこの子に飼われることにしたのである。
その後、女の子は俺には「スノーボール」、そして仲間二人には「アイスマン」「ホワイトスノー」とそれぞれ名づけてくれた。実はこの名前、結構お気に入りだったりする。
「「「ぶ〜ぶ〜」」」
俺たちは必死でご主人様の探している物を探す。どうやら小さくて人に似たような形をしたものを探しているらしい。
俺たちは人目を全く気にせず、鼻をきかせて探すが一向に見つからない。
「うぐう、今日も見つからないのかな……」
ご主人様は俺たちと会う前からずっと探し物をしている。それでも見つからないのだからきっと相当変なところにあるのだろう。案外、地中に埋まっているのかもしれない。
と、まあそんなことを考えていたとき、向こうからなにやら他の人とは違うように感じる青い髪の女性が来た。
「あら、あゆちゃん。どうしたんですか?」
「あっ秋子さん!」
どうやらお互い知り合いらしい。
ご主人様は秋子さんという人と楽しそうにおしゃべりしている。でも……
何故か秋子さんという人の視線は常にこっちを向いていた。
……こっ怖いよ!なんか邪悪な気を感じるよ!
そして、
「ところであゆちゃん、この豚はどうしたの?」
きっ来たー!(汗
正直、やばいような気がする……。
「あのね、僕のタイヤキ食べたから探し物探すの手伝ってもらってるんだよ」
「そう……ねえ、あゆちゃん。この豚私にゆずってくれないかしら?」
秋子さんのお願いにご主人様は、
「えっ……ダメだよ秋子さん。この子たちは僕がちゃんと飼うんだから」
ご主人様…その気持ち、とっても嬉しいです!
「ならタイヤキ30個でどうかしら?」
「うっうぐぅ……」
……前言撤回。秋子さんの誘惑にご主人様は心も体も揺れ動いているようだ。
だっダメだご主人様!誘惑に負けちゃ!
「…仕方ないわね。その代わり謎ジャ……」
「どうぞ」
ご主人様は何かを察したのか、すぐに俺たちの手綱を渡した。
ご主人様…(涙
「ごめんね、僕も命が惜しいんだよ……」
ご主人様が怯えている……きっとその「謎ジャ……」というのは相当なものなのだろう。
そして、俺たちは秋子さんという人の手に渡ってしまった。
「さて、一緒に行きましょうか。今日は肉まんです(ボソッ)」
俺は隙を見て逃げた。とてつもないほどの殺気を感じたからだ。
すまん!ホワイトスノーにアイスマン!
俺は死にたくない!死にたくないんだ!!
秋の夜風が身にしみる。仲間はあの青い髪の悪魔のような女に捕らわれ、ついに俺一人になってしまった。ああ、きっと今頃ホワイトスノーとアイスマンは……考えるのはよそう。悲しくなるだけだ。
一人とぼとぼと人気のない道を通る。すると、目の前に一人の女性の姿があった。
「ふぇ〜豚さんですか?」
興味津々といった感じでで女性は俺を見る。長い金色の髪が美しい。素直にそう思った。
「あははー豚さんだー。かわいいー」
そういって俺をなでなでしてくれた。どうやら、危害を加えるつもりはなさそうだ。
俺はその女性に擦り寄った。
「よしよし、豚さん。私の家に来てくれますか?」
おお!それは願ってもない。このような人に飼われたらきっと幸せな生活が送れるだろう。
そう判断した俺は大きな声で、
「ぶーぶー!」
と言った。豚だから人間の言葉なんてしゃべれんしな!
俺の気持ちをどうやら分かってくれたのか女性はつけっ放しだった俺の手綱を持った。
「あははーこっちですよー」
そのまま、俺は女性の後をついていった。
女性についていった俺は家を見て愕然とした。でっでかい!
まさかここまでとは…ここならきっと俺は幸せに暮らせる!そう確信した。
女性が中に入っていく。庭も広い。きっと俺もいい所をもらえるのだろう。そう考えるだけで嬉しくなってくる。
やっとこさ家の入り口まで到着すると、女性は扉を開けた。
「おかえりなさい……」
中からは黒い髪をしたおとなしそうな女性が迎えてくれる。何者だろうこの人は。まあいいか、俺にはきっと関係ない。
「あははー舞、ただいまー」
「佐祐理、その豚は……」
「ああ、この豚さん?」
「今日の夕食ですよー」
へっ?
じゅー
「あははー豚の丸焼きおいしそうだねー舞」
「はちみつくまさん」
「あ、そういえば秋子さんが肉まん作りすぎたから祐一さんが持って来てくれるってー」
「秋子さん作ったの肉まん……楽しみ」
じゅーじゅー……
終わり