ピピピ ピピピ ピピピ

「・・・ん」

ピピピ ピピカチャ

「う・・・ん」
目覚まし時計を見ると時刻は4時半を指していた。
・・・朝の掃除をしなくちゃ。
「・・・よいしょ」
布団を押し上げ、寝床から出ようとすると左に何らかの気配。

「・・・ん〜」

「・・・姉さん」
人の布団に潜り込まないで、と再三言っているのに。改善する気は・・・ないのだろう。やっぱり。
「・・・・・」
それでも余りに気持ち良さそうに眠っているので起こすのも気が引けた。何となく、そのまま姉さんの寝顔を眺めてみる。
疲れているのかも、知れない。
屋敷内での仕事はほぼ私と半々の量だけど、姉さんはそれに加えて食料品の買出しもやっているのだから。
「ごめんなさい、姉さん」
だけど、いつか私も姉さんの買い物を手伝いながら外へ出掛けたい。陽の当たる場所を、一緒に歩きたい。
その為に一つ一つ頑張って行こう。少しづつでも、進んで行こう。
「あとちょっとだけ・・・休んでいて下さい、姉さん」
そう姉さんに囁きかける。

「・・・ん・・・す・・・ばぁ・・・」

「?」
・・・寝言?

「ふぇふぇふぇ・・・だめでひゅよしきひゃぁん・・・ひしゅいちゃんがおきちゃいまひゅ・・・」

瞬間、私の右手は閃光と化した。









遠野志貴弾劾裁判in遠野家 〜貴方を、絶倫です〜










俺がいつも通り翡翠に起こして貰い、一階に降りた時、俺を出迎えたのは秋葉と(右頬を妙に腫らした)琥珀さんだった。
「・・・琥珀さん。どうしたのその顔」
「うう、痛いです・・・」
「自業自得です」
俺・琥珀さん・翡翠と台詞が続く。
・・・なんだか微妙に会話が噛み合ってないな。
「兄さん、おはよう御座います」
「ああ、おは・・・」
何だか微妙に剣呑な気配を発している秋葉。・・・あの日だろうか。
「・・・何か?」
「いえ、何でもありません」
秋葉に睨まれ、萎縮する俺。情けない兄貴だ。略してナサアニ。
「早速で申し訳ありませんが志貴様。早急に席にお着き下さい」
「え?」
「早くして下さい!兄さん!」
「イ、イェッサー!」
上官に従う軍人の如く、妹に従うナサアニ。
「はい、全員揃いましたね。では始めましょう」
そう秋葉が言い、片手を挙げ、指を鳴らすと。

ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴゴ

「・・・え?」
重い音と共に、床から幾つもの突起が伸びてきた。
それが椅子を上空にせり上げ、あるいは囲み、五秒もすると居間は完全に元の姿を失った。
果たしてそこに現れたのは裁判所だった。生では初めて見たので多少は興奮したが驚きの方が大きい。
「な、何だコレ!?」

「静粛に!」

凛とした声が場を制す。
嫌な予感を抱えつつ、声の聞こえた上にせり上がった席の方を見ると。
「・・・何だ。やっぱシオンか」
「な、何だとは何ですか!しかもそのやはりとはどう言う意味ですかっ!」
「だって最近シオンって何だか汚れ役と言うか、お笑い役に徹してるじゃんか。だから多分ーと思って」
「だ、誰が汚れ芸人でお笑い担当ですか!?」
そこまで言ってはいないぞ。・・・合ってるけど。
「・・・シオン、そこまでにしておいてくれる?話が進まないわ」
そうシオンを諭す秋葉は、ちゃっかり俺の後ろに現れた高台の席に腰を降ろしていた。
「す、済みません。つい取り乱しました。では本題に入りましょう」

カン

裁判所で裁判長が叩く木槌(っぽいモノ)を鳴らしつつ、シオンは声高らかに叫んだ。



「これより遠野志貴弾劾裁判を行います!」



・・・は?
「罪状は使用人である琥珀との淫行疑惑!」
「ちょっと待てぇ!?」
「被告人!発言は弁護人を通して行いなさい!」
・・・駄目だ。なりきってる。つーか俺のいる所、被告席になってるし。
「べ、弁護人って言われても・・・」
「横にいるでしょう」
「え?」
「どーもー。弁護人のアルクェイド・ブリュンスタッドでーす。アルクって呼んでねー」

ガンッ

「し、志貴?何やってるの?頭手すりにぶつけたりして」
「何でお前はお約束の様にここにいるんだ・・・」
「志貴と遊ぼうと思って来たら『面白い事がありますからどうですか?』ってメイド姉が」
「・・・琥珀さん。アンタ本当に面倒事作るの好きなのな」
「えー?そんな事ないですよ?」
笑いながら言う琥珀さん。・・・絶対嘘だ。
「むー、志貴。それどう言う意味?」
「そのままの意味だよ」
「む、ひっどーい」

カンッ!

「はい。弁護人は弁護を放棄したとみなし、遠野志貴は有罪判決です。残念な結果になりましたがこれも予測済みの事態でした」
「早っ!?」
一回の聴取でいきなり判決かい。
「はーい。そこの錬金術師ー。質問」
「何だか語尾が延びてる所がそこはかとなく勘に触りますが・・・。何ですか真祖」
「弁護って、志貴のアリバイを証明すればいいの?」
「簡潔に言えばそう言う事になります」
「んー、じゃあ証明出来るよ?」
「どうやってですか。志貴の夜に置ける行動を貴方が知り尽くしているとでも?」
「だって淫行疑惑って言うと夜の就寝時間以降のアリバイを証明すればいい訳でしょ?
 それにメイド姉が寝言でマズイ事を口走ったのは今日が初めてなんだよね?」
しっかりと聞いてたのか。
「そうですが」
「と言う事はここ2〜3週のアリバイでも証明出来れば万事おっけーなんだよね?」
「そうですね。その程度の期間のアリバイが立証されれば志貴の無実は証明出来ます」
「うん。じゃあ問題ないよ」

―――・・・ちょっと待て。

「それではそのアリバイ証明をして貰いましょうか?アルクェイドさん」

―――琥珀さんとの情事疑惑の無実が無実が証明されても。

「そうですね。弁護人の意見を袖にする訳にもいきませんし」

―――アルクェイドが俺のアリバイを証明すると言う事は即ち。

「うん。だって―――」
「ま、待て!アルクェ―――」



「一ヶ月くらい前から昨日まで志貴、夜はずっと私の部屋にいたもの」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
・・・言っちまった。
「ね?志貴」
「い、いや。間違いではないんだけどその意味をダイレクトに受け取ると色々不都合が生じると言うか」

「―――兄さん?少しお時間宜しいでしょうか?」

石化が解けた秋葉が満面の笑顔でこっちを見ていた。でも赤。
「ま、待て秋葉。アルクェイドの家に行ってたといっても暫く留守にするからレンと一緒に留守番してただけでっ!」
「そうなんですか?レン」
「(ふるふる)」
首を横に振るレンの手にはショートケーキの乗った皿。横には琥珀さん。
・・・買収しやがった。
「・・・レンをダシに使ってまで言い逃れをしようとするとは。やはり兄さんには遠野家のスペシャル教育コースを受けて頂きましょう」
「ま、待て秋葉!話せばわかる!!」
「問答無用です」





その日、終日遠野の屋敷から人のモノとは思えない悲鳴が聞こえたと言うが、それはまた別のお話。





おまけ



「そうですよね!やはり一晩寝かせたカレーはジャガイモが重要ですよね!」
「そうだね。ルーと一体化している様で実はジャガイモ自身の食感と味を損なっていないのが最高だね。
 その事をこのメシアンってお店はよく分かっているよ」
「・・・素晴らしいです。貴方とは魂からの友人になれる気がします」
「私もだよ」
「私はシエルと言います。貴方は?」
「川名です。川名みさき。宜しくね。シエルちゃん」



そんな今日の先輩ツインズ。










後書き。

ドスプレッシャー。<挨拶

ども。がおがおです。魂の赴くままに書いていたらよく分からない話に。
創作の際に遠野家って何でもアリですから楽ですよね。(ぉ
ちなみに冒頭が前作と似てるのは仕様です。・・・ほ、本当だよ?
でも全体通して見ると相変わらず短いなぁ。どうしたものだろーか。日々是鍛錬ってのを胸に置きつつ頑張ります。

閑話休題。

最近創作ペースがとみにスローリィ。・・・頑張らなくちゃぁ。
最後に。ここまで読んで下さった奇特な方、どうもありがとう御座いました。またお会いする事がありましたら次回作で。ではー。